臺灣

民雄薪傳二手書店弱勢學習的USR初心

民雄薪伝二手書店の社会的弱者向け学習にみるUSRの初心
專題文章 ( 特集記事 )
學校(学校) | 國立中正大學通識教育中心(国立中正大学教養教育センター) 作者(著者) | 胡維平
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平交道旁溫暖的燈光
省道臺1線,穿越絢麗繁華的大都市,也繞過嘉南平原不起眼的鄉村。南下258公里處會遇到嘉106縣道,左轉通往山區,遠遠可望見國立中正大學沿著山丘一排排的建築;右轉走入民雄鄉的鬧區,縱貫鐵路上南來北往的列車忙碌地穿梭。

踏切のそばの暖かな灯り
省道台1号は、にぎやかな大都会だけでなく、嘉南平原の普通のいなかを通り抜けていく。258キロメートルほど南下すると嘉義県の県道106号にぶつかり、左折し山に向かっていくと、遠くに丘に建ち並ぶ国立中正大学の建物が見えてくる。右へ曲がり、民雄郷の繁華街に入れば、縦貫鉄道を南北に走る列車があわただしく行き交う。

黃昏時分,柵欄升起,越過了平交道,一批批觀光客滿心期待的左轉進入知名的站前鵝肉街;直行靠右,一棟舊式房屋的二樓亮起一排明亮的燈光,在農會停車場旁一個不起眼的角落;一批又一批背著書包的學童與大學生,魚貫走入一間堆滿了舊書的大廳,左側高處掛著一條鮮紅色的布條,上面寫著「民雄薪傳二手書店」。

夕暮れ時、遮断器が上がり踏切を渡ると、観光客の一団が期待に胸を膨らませて左に曲がったところにある駅前の有名なガチョウ料理店が立ち並ぶ道、鵝肉街へと入っていく。まっすぐ進んだ右側に一棟の古い建物があり、2階には明かりが並んで灯っている農協の駐車場のそばのどうということのない街角、かばんを背負った子どもたちや大学生が一人また一人とに古本が積まれた広いフロアへと入っていく。左側には、真っ赤な横断幕が高々と掛けられ、「民雄薪伝二手書店(=古書店)」と書かれている。

偏鄉弱勢學童的困境
雲嘉地區是臺灣傳統的農業縣,在全國的評比中,人口老化、文教力、平均可支配所得都長年墊底。青壯人口外移,隔代教養以及窮困所衍生的青少年問題格外令人憂心。

不便ないなかで暮らす社会的弱者の子どもたちの苦境
雲嘉地方は台湾の伝統的な農業県であり、全国的にみると、高齢化、学力、平均可処分所得のいずれにおいても長年、全国で最下位である。青壮年人口の流出と、祖父母世代による孫世代の養育、貧困からくる若者の問題は特に憂慮されている。


要翻轉偏鄉地區弱勢家庭下一代的命運,顯然必須從普及均等教育著手。雖然多年來政府、民間在這方面也做過努力,但成效非常有限,弱勢學童的教育問題依然非常嚴重。這對於大部分關在大學校園圍牆內的師生而言,並不容易親身體會,也沒有動力想去做一些改變。然而對於黃金山先生而言,自己家鄉民雄的這群落難天使的境遇卻讓他感到切身之痛。

僻地で暮らす社会的弱者の家庭の次世代の運命を好転させるためには、普遍的で公平な教育が重要であることは明らかである。この点について、長年にわたって政府や地域社会が努力を重ねてきたが、その成果は非常に限定的で、社会的弱者の学童の教育問題は依然として非常に深刻なままである。しかし、大学のキャンパスにいる多くの教員や学生にとって、これを身近に感じることは難しく、変化を起こそうというモチベーションもない。しかし、黄金山氏にとって、自分のふるさとの民雄に暮らす、こうした不遇な天使たちの姿は、身を切られるような痛みを覚えるものであった。

薪火相傳,USR捨我其誰
11年前黃金山先生為了提升民雄地區的讀書風氣,在民雄農會樓上閒置的空間創辦了薪傳二手書店。他一口氣買下了當時即將拆遷的臺北光華商場內所有舊書店的藏書運回到薪傳。

教育の火をUSRは決してあきらめない
11年前、黄金山氏は民雄地区での本を読む雰囲気を高めようと、民雄農協の建物の使われていないスペースに古本屋の「薪傳二手書店」を開いた。そのころ取り壊し間近だった台北光華商場内の古書店から、すべての蔵書を一気に買取り薪伝に持ち帰ったのだった。

從世貿二館館長退休後,黃金山便回鄉照顧父母並經營書店,鄉親們都還是習慣以「黃館長」稱呼他。經過了一段時間,黃館長體會到這些學習弱勢孩童真正的問題在於學習時沒有人陪伴,在大班上課跟不上進度,缺乏能對他們因材施教的老師,成績低落缺乏自信而逐漸放棄學習。而在生活基本條件上,甚至有些人連飽餐一頓都有問題。

黄金山氏は台北世界貿易センター2号館の館長を退職後、故郷に戻り両親の世話をしながら書店を経営した。郷里の人たちは今でも彼を「黄館長」と呼んでいる。しばらくすると、黄館長はこれらの社会的弱者の子どもたちの本当の問題は、勉強を見てくれる人がおらず、クラスで授業を受けても付いていけず、それぞれの能力に応じて教えてくれる教師がおらず、成績が落ちて自信を失い、勉強をやめてしまうことにあると気づいた。また、生活の基本的な条件として、なかには食事を満足に摂ることさえできない子どももいた。

經過一番嘗試與探索,黃館長決定在薪傳開始辦理弱勢學童放學後一對一完全免費的課業輔導,請當地國立大學生擔任家教老師的工作,並免費提供所有師生餐點。以這種方式辦理課輔的成效非常良好,報名前來的弱勢學生數目持續的增加。除了經營的開銷不斷地提高外,穩定的師資來源成為一個關鍵的問題。

黄館長は試行錯誤の末、放課後、薪伝で社会的弱者の学童を対象に一対一の補習を無料で行い、地元の国立大学の学生に家庭教師の仕事を依頼し、教師と生徒の食事を無償提供することを決めた。このアプローチによる補習の成果は非常に高く、申し込みにくる社会的弱者の学童の数は増え続けている。必要経費がどんどんかさんでいくほか、安定した講師陣の確保も重要な課題となっている。

黃館長獲知國立中正大學有「社會服務學習」制度,因此向中正申請成為校外合作單位,希望能吸引更多的大學生投入課輔教學。由於薪傳二手書店在地的名聲響亮,參與的人數的確有提升,但數量仍不穩定,而且大部分大學生也缺乏補救教學的經驗。

黄館長は国立中正大学に「社会サービス学習」制度があることを知り、より多くの大学生が補習授業に携わってくれるよう大学に学外協力組織としての認定を申請した。薪伝二手書店は地元でよく知られた存在で、参加者数は確実に増えたが、人数が不安定で、なおかつ、ほとんどの大学生が補習を行った経験に乏しいという面もあった。

2017 年教育部鼓勵各大學申請執行大學社會責任(USR)實踐計畫,中正大學一個以通識教育中心及理學院教師為主所組成的團隊獲通過執行「植種.結晶.昇華雲嘉地區中小學科學教育揚升計畫」,以提升地區基礎科學教育,減少城鄉落差為首要目標。

2017年、教育部は各大学に「大学の社会的責任(USR)実践プロジェクト」の実施を申請するよう促した。 中正大学では、教養教育センターと理学院の教員を中心に構成されたチームが「種まき・実り・昇華-雲嘉地区小中学校科学教育向上プロジェクト」を実施することになった。 このプロジェクトは、地域の基礎科学教育の向上と、都市部と農村部の格差是正を目的としていた。

計畫團隊盤點地方需求,發現了民雄薪傳師資來源不足的困境,計畫主持人通識教育中心胡維平主任與黃館長協商,決定由USR計畫團隊聘請具國教及心理輔導經驗的教師在校內開設一門正式的二學分通識課程「服務學習:課輔知能在補救教學的應用」,以提供較穩定的課輔師資來源。

そして、プロジェクトチームが現地のニーズを調査、把握したところ、「民雄薪伝」が教師のなり手不足という問題を抱えていることがわかった。そこで、プロジェクトリーダーの胡維平主任と黄館長とが協議し、USRプロジェクトチームが義務教育や心理カウンセリングの経験を持つ教師を採用し、学内に2単位の教養科目「サービス学習:カリキュラムに基づく知識の補習授業への応用」を正式に開設し、補習教師をより安定して確保することに決定した。

參與的大學生在每週的課程當中學習、討論弱勢課輔的教學技巧,並以民雄薪傳二手書店為服務的實踐場域。當年參與課程的企管系三年級吳同學說:「一開始我也跟大部分大學生一樣認為只要拿到學分拿到時數就可以走了,但後來跟這些學生接觸久了,慢慢發現他們的改變,就覺得自己做的是一件有意義的事。」

この授業を履修する学生は、毎週の授業のなかで社会的弱者の子どもたちへの補習の指導法について学び、話し合い、民雄薪伝二手書店を実践の場とした。そのころこの授業を履修した企業管理学科3年の呉さんは、「最初は他の学生と同じように、単位と履修時間をクリアしたら、すぐにやめようと思っていたが、子どもたちと接するうちに、彼らが変わっていくことにだんだん気づき、自分が意義のあることをしていると感じるようになった」と話す。

根據黃館長的觀察,這種新的制度確實明顯的提升了弱勢課輔的成效,人力調配的運作上也較為順暢。每學期服務前黃館長還會辦理職前訓練,USR計畫團隊師資也前往課輔現場與弱勢生家長辦理座談會溝通。薪傳課輔成效的提升,也帶來地方更多的需求。這門課輔知能課程也逐年從一班變成二班,到現在已經增加到五班之多,全年參與薪傳課輔的中正大學學生從幾十個人到2021年已經超過500 人。

黄館長の観察によると、この新しい制度は社会的弱者の子どもたちを対象とする補習の効果を確実に向上させ、人材配置のマネージメント面も比較的順調だった。また、学期が始まる前に黄館長は事前のトレーニングを実施し、USRプロジェクトチームの教師も補習の現場に来て、社会的弱者の子どもたちの保護者と意見交換してコミュニケーションを図った。薪伝の補習の効果が高まると、地域からの要望も増えた。補習に関する知識・技能習得コースも年を追って1クラスから2クラスになり、今では5クラスにまで増えた。薪伝の補習クラスに携わる中正大学の学生は、年間に10数人だったものが2021年には500人を越えた。

圖:薪傳一對一課輔教學現場
圖:薪伝で行われている一対一の補習授業の様子

德不孤必有鄰
薪傳大規模弱勢課輔每天上百人運作的開銷非常龐大,黃館長數年間就花光了所有的積蓄及退休金,還將自己的房子抵押貸款以維持薪傳的開支。USR 計畫雖致力協助開設課程、自籌經費聘任師資、提供課輔大學生的平安保險、聘任行政助理支援庶務、追蹤課輔弱勢學生成績表現,但在經濟上能給予的支援非常有限。

支援者の登場
社会的弱者の子どもたち向けに開設した薪伝の大教室には1日百人以上が参加し、運営経費は膨らんでいる。黄館長は数年の間に貯えと退職金を使いきり、自宅を抵当に入れ、借りた資金で支出をまかなっている。USRプロジェクトもクラスの開設の支援に力を入れ、自己資金で教師を確保し、補習を行う学生の保険料を負担し、事務担当の助手を雇い庶務のサポートに充て、社会的弱者の子どもたちの成績アップに向けてフォローしているが、提供可能な資金的支援には限りがある。

當被問到薪傳還能撐多久時,黃館長總是樂觀的說:「不能放棄這一群孩子,到時候總會想到辦法的。」2021年初,多家主流媒體大幅報導了十年來薪傳課輔的成效及黃館長感人的事蹟,受到全國各界及海外華人熱烈的迴響,從此薪傳陸續接受到來自各方的捐款支助,終於暫時免於斷炊的顧慮。

黄館長は、薪伝がどれくらい持ちこらえられるのか尋ねられると、いつも楽観的に「この子どもたちを放っておくことはできません。時が来れば、方法は思いつくものです」と答えてきた。2021年始め、多くの主要なメディアが、10年来、薪伝の補習クラスが挙げてきた成果や、心動かされる黄館長の取り組みを大きく取り上げた。台湾の各界や海外の華人から大きな反響があり、この時から薪伝には各方面から資金的な援助が次々に寄せられるようになり、ようやくしばらくの間の見通しが立った。

圖:薪傳一對一課輔教學現場
圖:薪伝で行われている一対一の補習授業の様子

草上之風,成果擴散
黃館長在薪傳經營非常艱困的時候就曾許下願望,未來要將薪傳的經驗擴散到全國其他有需要的地方,在當時聽起來似乎是一個遙不可及的目標,但在短短一年之中,承蒙地方人士的奔走以及公益團體的支持下,嘉義縣的水上分部以及大林分部竟都已陸續成立。

風は草をなびかせ、成果は広がっていく
黄館長には、薪伝の経営が非常に困難だった時から思い描いていたことがある。将来、薪伝の経験を全国の必要としている地域に広げるということである。当時は、実現には程遠い目標であるかに思われたが、わずか1年の間に、地域の人たちの尽力と公益団体のサポートにより、嘉義県の水上と大林で支部が相次いで発足した。

數年前中正大學USR與黃館長還在為著薪傳存續而並肩努力,而今薪傳二手書店已成為國內弱勢學生補救教學的代名詞,回想起來彷若隔世。近日,政治人物來來去去從不給任何承諾者有,媒體捕風捉影膚淺報導者多,機關團體競相接洽而沾光者眾。黃館長與USR計畫也達成共識,弱勢教學輔導工作要盡量不受這些俗務的干擾。

数年前までは、中正大学USRと黄館長は薪伝の存続に向けてともに努力していたが、今ではすでに薪伝二手書店は台湾の社会的弱者の子どもたちの補習クラスの代名詞となっている。振り返ってみれば、隔世の感がある。ここ最近では、政治家たちがやってきては何ら約束するでもなく、メディアはつかみどころのない表面的なレポートを行い、組織や団体は競って恩恵に与かろうとする。黄館長とUSRプロジェクトは共通認識として、社会的弱者の子どもたち向けの補習の取り組みが世俗的な干渉をできるだけ受けないように心掛けている。

中正大學USR計畫本著改善偏鄉教育的初心,全力與薪傳配合,包括提供課輔師資、專業訓練、行政協助以及成效分析等工作。將大學生服務學習課程轉化為弱勢學生陪伴與課業輔導,並且以專業的師資在大學中開課,使得大學師生服務在地學童的教育工作能有效的生根,以致開花散葉,正是「植種結晶昇華」USR計畫的目標。據黃館長表示,目前新竹、臺中、臺東等地亦開始籌畫薪傳分部,USR計畫團隊也樂意與當地的合作大學分享相關的服務學習制度、課程、與執行的經驗,確保薪傳弱勢課輔的成果能成功地擴散到全國各個角落。

中正大学USRプロジェクトは、僻地教育の改善という初心に立ち、補習を行う教員の供給や専門的なトレーニング、事務的なサポート、効果分析などの側面から、全力で薪伝と協力している。大学生のサービス学習カリキュラムを実際に社会的弱者の学童の世話をしたり学業の補習にしていくとともに、大学に専門的な教員による科目を開講し、大学の教員と学生が地元の学童向けに行う教育業務が効果的に根を張り、さらには花を咲かせ、葉を散らすようにするのが、「種まき・実り・昇華」というUSRプロジェクトの目標である。黄館長によると、現時点で、新竹、台中、台東などでも薪伝の支部発足に向けた準備が始まっている。USRプロジェクトチームも現地の協力大学に対して、関連するサービス学習の制度とカリキュラム、実施の体験を積極的に提供し、社会的弱者の子どもたちを対象にした薪伝の補習の成果が全国各地の片隅に順調に広がるようにサポートしている。

從民雄車站轉回106縣道,農會二樓的燈光依然燦爛,透露出薪傳關懷地方教育無限的愛心,映照著走出象牙塔的大學生與弱勢學童良性的互動。穿過平交道,越過臺1線,山坡上中正大學 USR 的燈火也依然明亮。

民雄駅から県道106号を曲がると、農協の2階の明かりはまばゆく灯り、薪伝が地域の教育に掛ける限りない愛情を表し、象牙の塔を出た大学生と社会的弱者の子どもたちの好ましい相互関係を映し出している。踏切を渡り、台1号線を過ぎると、山への途中にある中正大学ではUSR の灯が明るく輝いている。

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