長野縣松本市奈川地區的農業觀光企劃 ——探討透過與信州大學的合作及與台灣的大學交流之可能性

摘要
長野縣松本市奈川地區是鄉村人口外流持續進行的山谷地區，當地的主要活動者不足已然成為嚴重的問題。2024年3月，非營利法人組織「Agri奈川」為此成立。並且，以該法人為中心於2025年1月成立的「奈川農業觀光協議會」也推動活用當地資源的農業住宿旅遊事業，期望能達成增加該地區相關人口的目標。協議會希望透過在這樣的農業住宿旅遊事業中提供以奈川傳統蔬菜製成的在地料理及農業與戶外體驗，吸引國內外的人們造訪當地。協議會尤其積極地想吸引頻繁造訪長野的台灣訪日旅客，以及促成與當地信州大學已建立合作關係的台灣各大學的學生間的交流。
因此，當地為了推廣奈川地區，開始針對台灣展開宣傳活動，並與信州大學筆者（關教授）所屬的研究室合作，著手規劃日台學生的國際共修計畫。該計劃安排日本與台灣的學生到奈川進行農業住宿旅遊，深入了解當地的特色與面臨的課題，期望他們成為奈川的支持者，同時成為具備國際視野與跨文化溝通能力的人才。此舉有望成為地方與大學之間國際合作的典範，並推動日台雙方的學術交流。未來也希望透過農業觀光的發展，持續深化國際交流，不僅活化地方，更能在人才培育與學術研究方面帶來多方面的貢獻。

Abstract
長野県松本市奈川地区は，過疎化が進む山間地域であり，地域の担い手不足が深刻な課題となっている。2024年3月にはNPO法人あぐり奈川が設立され，同法人を中心に2025年１月に結成された「奈川アグリツーリズム協議会」では，地域資源を活用した農泊事業を推進し，地域の関係人口の増加につなげることが掲げられている。この農泊事業は，奈川の伝統野菜を素材とする郷土料理の提供や，農業・アウトドア体験を通じて，国内外の人びとを呼び込もうとするものである。国外に関しては、特に，長野県への来訪が多い台湾からの訪日客や，地元の信州大学と提携関係にある台湾の大学との学生交流に，強い関心が寄せられている。
このような背景・関心により，奈川地区では，台湾に向けたプロモーションや，信州大学に所属する筆者（関）の研究室との連携による，日台学生の国際共修プログラムの構築に向けた動きが始まっている。後者では，日本と台湾の学生が奈川での農泊を体験し，地域の魅力や課題についての理解を深め，地域のサポーターになると共に，国際社会で通用する能力やグローバルな視点を持つ人材として成長することが期待されている。このようなプロセスは，地域と大学の国際的な連携による過疎対策のモデルとして，日台の研究者間で共有され，両国の学術交流の促進に資するものとなる可能性がある。過疎化が進む地域のアグリツーリズムが，継続的な国際交流に発展し，地域の活性化のみならず，人材育成や研究者交流の促進など，さまざまな貢献を果たすものとなることが期待される。

1. 奈川的農業觀光計劃的啟動
松本市的奈川地區（舊稱奈川村）是一個位於山區的人口移出區，距離松本市中心約一小時車程。自2005年併入松本市以來，人口減少至原來的一半，截至2025年2月，總人口僅剩545人 ，成為市內人口最少的地區。奈川地處海拔約1200公尺的高地，四周環繞著豐富的自然景觀。當地以農業為主，但正面臨著因人手不足而難以維持聚落的挑戰。為了解決這一問題，NPO法人「Agri奈川」（理事長：田中浩二）於2024年3月成立，致力於處理耕作放棄地問題，保護奈川秀麗的自然環境與傳統農業，推動地區活化。法人成立後，一名二十多歲的工作者移居至奈川，為當地注入了新的希望。
然而，僅依靠農業發展來活化地區仍有其侷限。因此，田中理事長以農業為核心發展基礎，與當地的農民、住宿業者、餐飲與觀光業相關人士，以及政府與大學等多方合作，共同成立了「奈川農業觀光協議會」（以下簡稱協議會），推動以農業住宿為核心的農業觀光事業，期望吸引更多與當地有關聯的人口並創造收益。2025年1月，協議會舉行了初次大會，提出「以奈川在來蕎麥與傳統蔬菜的鄉土料理與體驗，打造充滿魅力的奈川」為口號，為當地農業觀光計畫邁出重要的第一步 。

１．奈川におけるアグリツーリズム・プロジェクトの立ち上げ
松本市奈川地区（旧奈川村）は，松本市街地から車で約１時間の距離にある山間部の過疎地域である。2005年の松本市との合併により人口が流出・半減し，現在の人口は545人（2025 年2月現在） となり，市内で最少人口の地域となっている。奈川は標高約1,200メートルに位置する豊かな自然環境に囲まれた地区で，農業が主な産業であるが，集落維持のための人手の不足に直面している。このような状況において，耕作放棄地を解消し，風光明媚な自然と伝統農業を守ることで，地域の活性化を進めようと， 2024 年3月に NPO 法人あぐり奈川（理事長：田中浩二氏）が設立された。その後，同法人が雇用する20代の就労者が奈川に移住したことは，地域にとって明るい兆しであると言えよう。
しかし，農業のみによる地域の活性化には限界があるという考えから，田中氏は農業を軸としつつ，地元の農家，宿泊業，飲食業，観光業の有志，さらに行政，大学が連携するコンソーシアム「奈川アグリツーリズム協議会」（以下，協議会）を立ち上げ，地域の人びとと農泊事業を中心とするアグリツーリズムを展開し，収益を上げると共に，地域の関係人口の増加をめざす取り組みを開始した。2025年１月には，協議会のキックオフ・ミーティングが開催され，「奈川在来そばと伝統野菜を活かした郷土料理＆体験で，人が集まる奈川をつくろう」を合言葉に，奈川地区でのアグリツーリズム・プロジェクトの第一歩が踏み出された 。

這項計畫首先意識到，挖掘奈川的魅力並向外界發信，是推動地方活化的重要關鍵。因此，促進在地居民的合作與連結成為首要任務。然而，這項工作需要具備戰略性的手法，必須將參與者與相關人士的多元想法與意見加以「可視化」，進而促進共識的形成。為此，專攻管理會計的關教授，將與信州大學內推動產學官合作的專家大庭副教授，以及專精農業經營學的小林Mizuki助理教授合作，運用管理會計的手法，致力於制定計劃的實踐願景與發展策略。
此外，在吸引「相關人口」的努力上，該計劃盼望能接待來自海外的訪日旅客，特別是長野來訪次數多的台灣旅客，以及與信州大學有合作關係的台灣各大學的學生。針對這一方向，信州大學的關教授與大庭副教授已著手設計並實施一項以奈川為場域的日台大學生國際共修計劃。接下來的第二節，將介紹奈川農業觀光企劃的背景與基本構想；第三節則聚焦於本計劃中，針對海外人才所構思的相關人口開發與增加策略；第四節將討論奈川地區與大學之間的國際合作，特別是透過推動與台灣各大學的交流，進一步開發出相關人口的可能性。

2. 農業觀光企劃的背景及實施計劃
日本的農業觀光始於1994年制定的《促進農山漁村停留型休閒活動基礎設施法》，該法意在推動活用在地文化、風土與自然資源的「停留型旅遊」的發展。在這樣的背景下，奈川成立了農業觀光協議會，致力於活用當地資源、發展農業觀光，以吸引國內外旅客，進而促進地區活化 。
歷史上，奈川曾是連接信濃與飛驒的野麥街道上的宿場（驛站），在交通上具有重要地位。這條街道特別以明治時期自飛驒前往岡谷與諏訪地區的製絲工廠工作的女性而聞名。隨著人員往來頻繁，奈川逐漸發展出一種以當地農產品入菜、為旅人補充體力的「款待文化」 。

プロジェクトでは，まずは，奈川の魅力の掘り起こしおよび外部への情報発信が重要であり，そのために，地域の人びとの協力や連携を促進する必要があることが強く意識されている。しかし，これには戦略的なアプローチが不可欠であり，プロジェクトの参加者・関係者のさまざまな考えや思いを可視化し，合意形成を図らなければならない。管理会計を専門とする関は，所属する信州大学において，産学官連携の専門家である大庭や，農業経営学を専門とする小林みずき助教らの協力を得て，管理会計の活用によるプロジェクトの実践的なビジョンづくりと戦略策定に取り組むこととなっている。
また，このプロジェクトでは，関係人口の増加に向けて取り組む上で，海外からの訪日客や日本に関心を持つ海外の人びと，特に，長野県への来訪が多い台湾人の観光客や，信州大学と提携関係にある台湾の大学等の学生を受け入れ，交流を推進することに，強い関心が寄せられている。これに関しても，信州大学からの協力者として，関と大庭が，奈川をフィールドとする日本と台湾の大学生の国際共修プログラムのデザインおよび実施に向けた検討に着手したところである。
以下，第2節では，奈川におけるアグリツーリズム・プロジェクトの背景および基本的な計画について紹介する。その上で，第3節では，本プロジェクトにおける海外人材をターゲットとする関係人口創出・拡大の構想に着目し，第4節では，奈川における地域と大学との国際的な連携，特に台湾の大学との交流促進による関係人口創出の可能性を論じる。

２．アグリツーリズム・プロジェクトの背景および実施計画
日本におけるアグリツーリズムは，1994年に制定された「農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律」に始まり，地域の文化や風土，自然資源を活用した滞在型の観光を推進することとなった 。奈川においても，地域資源を活用したアグリツーリズムを行うことで，国内外の人びとを呼び込み，地域の活性化を図るため，協議会が設立されることなった。
奈川は，信濃と飛騨を結ぶ野麦街道の宿場として，古くから交通の要所として栄えてきた歴史を有している。この街道は，特に，明治期に飛騨から岡谷・諏訪の製糸工場に働きに出た女性たちが行き来した交通路として広く知られている。多くの人びとが行き交う街道の宿場として発展したことで，奈川には，地域で栽培された農産物を旅人が元気を回復する料理として提供する「おもてなし文化」が生まれたとされる 。

奈川的農產品中，傳統的在來蕎麥至今仍持續種植，當地的梯田也依然維持生產。這些蕎麥被製成具有地方特色的「入湯蕎麥麵」，現已成為奈川餐飲店的招牌料理，吸引來自全國各地的遊客前來品嚐奈川獨特的風味。「入湯蕎麥麵」是奈川農業觀光計劃中的核心飲食項目之一。除了蕎麥之外，計劃也將提供被列為信州傳統蔬菜的「保平蕪」，以及使用「奈川黃瓜」與「花豆」等當地食材製作的鄉土料理，並與料理研究者合作，編寫與發行食譜書，積極推廣奈川的地方料理文化。
雖然奈川過去曾是交通樞紐，但如今主要幹道國道158號已不再穿越地區中心，導致其交通地位有所下降。不過，奈川仍保有數間溫泉旅館等住宿設施，繼續接待來訪旅客。農業觀光計畫構想爭取這些住宿業者的合作，同時計劃整修已歇業的旅館，改建為農業住宿旅遊設施，作為遊客能深入體驗在地魅力的「停留型旅遊」的基地。
奈川被豐富的自然環境所環繞，透過在「宛如浮在空中的梯田」中進行的農業體驗、採集野菜與野菇、溪釣等活動，讓人們能夠近距離感受大自然的恩惠與生活的豐富多彩。此外，當地還可享受四季各具特色的休閒活動，例如自然散步、戲水、露營、天文觀測、賞鳥等；冬季則可進行滑雪與雪地健行等戶外體驗。本計劃將透過舉辦試辦旅遊等方式，進一步完善這些體驗內容，並更進一步加強對國內外遊客的推廣活動 。
協議會將以以上的方式計劃整合當地的飲食文化、自然環境與現有住宿設施等多樣的資源，打造具吸引力的農業住宿旅遊體驗，並持續推動相關事業。而這樣計劃的主要目標在於培養能持續對奈川抱有興趣、並願意多次造訪的地方愛好者與支持者。這些人將與在地建立更深的連結，成為支援人口外流地區發展的重要「相關人口」。

3. 以吸引海外人才為主要目標的相關人口開發與增加策略
近年來，為了解決人口流失與減少所帶來的人才短缺問題，各地紛紛推動各類「相關人口」的開發計劃。為了給予這些計劃支援，中央政府、地方政府以及民間輔導基金會等也設立了各種補助與資金援助制度。根據日本總務省的定義，「相關人口」不同於定居於當地的「定住人口」，也非僅是短期造訪的「交流人口」，而是指與地方有各式各樣連結的群體。其中包括「經常往返當地的人」、「在地方有淵源的人（不論住得近或遠）」、「曾在當地工作、生活、居留的人」等各種人士。一般而言，可以期盼這些生活在地方以外的人才成為地方發展的重要推動者 。
各地在推動相關人口創造的過程中，目標對象並不僅限於日本國內的人才。例如，位於北海道西北部的秩父別町自2016年起，便積極透過外國留學生與當地居民的交流，加深他們對地方的理解，同時藉由外籍人員推播，向外界宣傳地方魅力。至今，該地已由留學生對居民進行訪談，並出版多語言手冊；也透過留學生參與味噌製作、鹿角加工等在地體驗活動，開發出嶄新的觀光資源。此外，外籍臨時工作人員也積極運用社群媒體進行資訊傳播，並規劃專為外國人設計的觀光行程等各色各樣的推廣活動 。此外，秋田縣橫手市自2015年起，與台灣的私立大學及市內企業簽訂了「國際產官學合作備忘錄」（並於2020年升級為「國際產官學合作協定」），推動一系列的合作包括接收前來實習的台灣大學生、促進他們返國後與橫手市持續保持聯繫，並請他們協助推廣橫手市的地方魅力等等。橫手市與返國後的台灣大學生延續交流的方法有：成立與橫手當地居民聯繫的Facebook群組（截至2025年3月，參加人數已達111人），以及在台灣的大學開辦有關社群媒體使用的特別課程、以高附加價值觀光為主題的工作坊等活動 。
參照這些國內的先行案例，奈川的農業觀光企劃也構想出以海外人才為主要目標的相關人口開發與增加計劃。長野縣擁有豐富的自然環境和多樣的觀光資源。根據民間調查 ，長野縣在2024年國內旅行目的地受歡迎程度排名中位居第8，且在同年的外國人住宿人數（累計人數）排名中 位列全國第13位。2024年長野縣的外國人累計住宿人數達到歷史最高的約219萬人，其中來自台灣的訪客最多，佔總數的約四分之一 。在擁有上高地、乘鞍岳、松本城等眾多知名觀光景點的松本市，2024年更有約3萬3千的台灣人來此住宿。這樣的人數若按國家和地區別計算僅次於泰國，位列住宿外國旅客人數的第二名 。縱使其中造訪奈川的人數仍然有限，本企劃將主要針對來長野縣觀光的交流人口，而外國觀光客中尤其關注造訪長野縣次數多的台灣旅客，並推動開發、增加相關人口的計劃。
在長野縣使用觀光廳調查數據的分析報告中顯示，對訪問日本進行觀光和休閒活動的台灣旅客而言，「這次進行的活動」類別中的「下次希望進行的活動」中的前三項分別是「泡溫泉」、「滑雪・單板滑雪」和「四季體驗（賞櫻、紅葉、雪等）」 。由於奈川擁有相當完備的溫泉設施和滑雪場，且如前述那般，在此可以享受四季各具特色的自然體驗，我們可以預期讓台灣旅行者在本地就幾乎能滿足上述的三項需求。因此，奈川農業觀光企劃的重要目標便是充分活用這些地方優勢，並推進交流人口的增加，以更進一步開發及增加相關人口。

4.由於與信州大學的合作關係，可望促成與台灣各大學間的教育及研究交流

從前述北海道秩父別町與秋田縣橫手市的案例可以看出，與大學等教育機構的合作，可能是創造相關人口的有效途徑之一。在奈川的農業觀光企劃中，也將與當地的信州大學合作，透過舉辦參與者與相關人員參加的「管理會計工作坊」，推動願景的建立與戰略規劃。同時，也構想接收台灣的大學生，並以奈川為據點，實施日本與台灣大學生的國際共修計劃。
信州大學於2023年提出了「VGSU（Greater Shinshu University的願景）」的經營願景，意在通過跨區域、領域的合作創造新的價值，為地方發展做出貢獻，並於2024年制定了VGSU的「全球版」 。該全球版計畫提出多項目標，包括增加外籍教師與留學生人數、擴充英語授課課程、加強與海外大學及研究機構的合作以促進共同研究與教育交流，以及推動地方的全球化支援。為實現這些目標，信州大學設立了由各部門教師跨領域參與的「全球信州推進本部」 ，以統籌推動相關工作。
在推動大學整體國際化及其對地方社會貢獻的過程中，筆者（關）所屬的經法學部也積極參與與海外大學、企業及團體之間的教育與研究交流。特別是在與台灣的交流方面，自2022年與國立台北大學法律學院簽訂學術交流協定以來，已在教育領域開設關於日台法律制度的線上國際共修課程；在研究方面，則展開了有關高齡者權益與財產保護的國際共同研究，以及針對再生能源法律規範的比較法研討會等多項計劃。此外，學部也與統籌台灣各地保護司團體的榮譽觀護人協進會聯合會簽訂了交流協定，並於2023年舉辦以日本與台灣保護司制度的縮減與高齡化為主題的國際研討會，深化雙邊交流 。
今後，經法學部將面臨一項重要課題──如何將過去累積的國際交流成果與地方社會相結合。而學部在奈川農業觀光企劃的參與和活動協助，正是朝這個方向邁出的具體行動之一。在這個過程中，除了與既有簽訂交流協定的學校合作外，也希望進一步促成與信州大學同屬「日台大學地方聯盟暨社會實踐聯盟（TJ　Alliance）」的其他台灣大學間的合作。
目前，此計劃由關與大庭兩位老師主導，預計邀請上述台灣各大學的學生實地造訪奈川，與信州大學的日本學生及留學生一同體驗農業住宿旅遊，品嘗在地料理，親身感受當地的自然魅力，並深入理解維持當地生活與景觀所面臨的課題。我們將由信州大學中相關知識、經驗豐富的全球化推進中心教師們的協助下進行國際共修計劃。透過這樣的國際共學經驗，參與學生不僅能深化對特定地區的理解，也能在跨文化交流中培養國際社會通用的能力與國際視野。奈川居民也深深期待，這些具有國際視野的年輕學子透過實地交流建立起與當地的連結後，能成為持續關注、支持奈川發展的「地方粉絲」與相關人口，為地區活化帶來長遠貢獻。
此外，奈川所實施的日台大學生國際共修計劃及其帶來的地方變化，也將為參與其中的兩國大學教師，提供一個難得的透過大學 × 地方 × 國際合作達成的人口流失問題對策的案例。透過對這一過程的觀察與成效驗證，有助於推動日台雙方在地方創生與相關人口議題上的研究深化，並促進更廣泛的國際學術交流。展望未來，本計劃也將積極與對相關人口開發手法及其社會影響有興趣的台灣大學研究者合作。希望以農業觀光為起點，開展持續性的國際交流，並在這項企劃中能在地方活化、人才培育與研究合作等多方面做出實質的貢獻。

奈川の農産物としては，古くから在来のそばが栽培され，域内の棚田では今なお生産が行われているが，これを使った「とうじそば」は，今日，地域の飲食店で提供され，県内外から奈川ならではの味覚を楽しむために多くの人びとが足を運んでくる。とうじそばは，奈川のアグリツーリズム・プロジェクトにおける「食」の主要なメニューであるが，そのほかにも，信州の伝統野菜にも指定されている「保平かぶ」，また，「奈川きゅうり」や「花豆」などを使った郷土料理を提供し，奈川の伝統食を多くの人びとに広めることや，料理研究家等の協力によりレシピ本を製作・発行し，郷土料理について積極的に発信することなどが，本プロジェクトでは計画されている。
交通の要所としての奈川の役割に関しては，現在は，地区の中心部を経由しない国道158号線が松本市と岐阜県高山市を結ぶ主要道路となったことで，その重要性は失われているが，奈川には温泉旅館など，数軒の宿泊施設が点在し，今も来訪者を出迎えている。アグリツーリズム・プロジェクトでは，これらの宿泊施設からの協力を得ると共に，休館中の旅館を改装した新たな農泊施設を整備し，地域の魅力を活かしたさまざまなコンテンツを体験できる滞在型観光の拠点とすることが構想されている。
豊かな自然環境に囲まれた奈川では，天空に浮かぶような棚田での農業体験，山菜取りやキノコ狩り，渓流釣りなどの体験活動を通じ，自然の恵みと人びとのくらしの豊かさを身近に感じることができる。その他，自然散策や川遊び，キャンプ，天体観測，バードウォッチング，また，冬期はスキー，スノートレッキングなど，四季折々のレジャーを楽しむこともできる 。プロジェクトでは，モニターツアーの企画・開催などを通じ，こうした体験活動等のプログラムをより充実させ，さらに国内外に向けたプロモーション活動に力を注ぐ計画である。
協議会では，このように，食や自然環境，既存の宿泊施設など，地域のさまざまなリソースを活かし，魅力的な農泊事業を創出し，継続的な展開を図ることが計画されているが，その主要な目的は，奈川に継続的に関心を寄せ、現地を何度も訪問する地域のファン，サポーターとなる人びとを生み出すことにある。このような人びとが，地域との繋がりを深め，その関係人口として，過疎化が進む地域を支える存在となることが期待されている。

３．海外人材をターゲットとする関係人口の創出・拡大
近年，日本各地において，人口の流出・減少による人材不足を解消し，地域の活性化を図るため，さまざまな関係人口創出事業が行われ，また，それらの取り組みを支援するため，中央省庁や地方自治体，民間の助成財団などによる補助金・助成金事業が実施されている。総務省によると，関係人口とは，移住した「定住人口」でもなく，観光に来た「交流人口」でもない，地域と多様に関わる人びとであると定義される。このなかには，地域を「行き来する者」，「地域内にルーツがある者（近居・遠居）」，地域と「何らかの関わりがある者（過去の勤務や居住，滞在等）」など，多様な人びとが含まれ，このような地域外の人材に地域づくりの担い手としての期待が寄せられているとされる 。
各地の関係人口創出事業でターゲットとされるのは，日本国内の人材にとどまらない。北海道北西部の秩父別町では，2016年以降，外国人留学生による住民との交流および地域理解の醸成を通じた町のPR活動，また，外国人職員による地元の情報発信などを行っている。これまでに，留学生による住民へのインタビューの実施とその内容を掲載した多言語パンフレットの刊行，留学生による各種体験活動（味噌づくり，鹿角加工など）を通じた新たな観光資源としてのアクティビティづくり，外国人の臨時職員によるSNSを活用した情報発信や外国人向けのツアーの企画・実施など，さまざまな取り組みが行われてきた 。また，秋田県横手市では，2015年に台湾の私立大学と市内の企業との間で「国際的産学官連携覚書」を締結（2020年に「国際的産学官連携協定」として更新）し，台湾の大学生によるインターンシップの受け入れ，台湾帰国後の横手市との持続的なネットワーク構築の促進および横手市に関する情報発信支援などを実施している。帰国後の台湾の大学生に対するはたらきかけとしては，横手市民と繋がるためのFacebookグループ（2025年3月時点で参加者111名）の立ち上げや，台湾の大学でのSNS活用の特別授業や高付加価値観光をテーマとするワークショップの開催などの取り組みが行われてきた 。
このような国内先行事例を参照しつつ，奈川のアグリツーリズム・プロジェクトにおいても，海外人材をターゲットとする関係人口の創出・拡大が構想されている。長野県は豊かな自然環境と多様な観光資源を有し，国内旅行の旅行先としての人気度に関する民間の調査 では，2024年は47都道府県中8位，また，同年の外国人宿泊者数（延べ人数）のランキング では，全国13位となっている。2024年の長野県の外国人延べ宿泊者数は過去最高の約219万人に上り，国・地域別では台湾からの来訪客が最も多く，全体のおよそ4分の1を占めた 。上高地，乗鞍岳，松本城など，人気の観光スポットが多い松本市にも，2024年は台湾から延べ約3万3千人の来訪客が宿泊し，国・地域別では，これはタイに続き，2番目に多い人数となっている 。このなかで，奈川を訪れる人びとは，現在は少数にとどまるが，プロジェクトでは，主に観光目的で長野県を訪れる交流人口をターゲットに，特に海外からの旅行者に関しては，県内への来訪が多い台湾からの訪日客を対象に，関係人口の創出・拡大を図る取り組みを進める計画である。
観光庁の調査データを用いた長野県の分析では，台湾から観光・レジャー目的で訪日した旅行者が「今回実施した活動」で「次回実施したい活動」の上位3項目は，「温泉入浴」，「スキー・スノーボード」，「四季の体感（花見・紅葉・雪等）」であるとされる 。これに関して，奈川では，温泉施設やスキー場が整備され，また，前述のとおり，四季折々の自然体験が可能であるため，台湾からの旅行者の優先的なニーズを地域内でほぼ完結させることができると期待される。このような地域の強みを活かし，交流人口の増加を進め，さらに関係人口の創出・拡大に繋げることが，奈川のアグリツーリズム・プロジェクトの重要な狙いである。

４．信州大学との連携による台湾の大学との教育・研究交流への期待
前述の北海道秩父別町や秋田県横手市の事例のとおり，関係人口の創出をめざす取り組みにおいて，大学等との連携は効果的な手法となりうる。奈川のアグリツーリズム・プロジェクトでは，地元の信州大学と連携し，参加者・関係者による「管理会計ワークショップ」の開催などによるビジョンづくりおよび戦略策定を進めるが，同時に，台湾の大学の学生を受け入れ，奈川をフィールドとする日本と台湾の大学生の国際共修プログラムを実施することを構想している。
信州大学では，圏域を超えた広域連携による新たな価値創出を通じ，地域の中核大学として，地域の発展に向けた貢献を果たすために，2023年に「VGSU (Vision for Greater Shinshu University)」という経営ビジョンを打ち出し，さらに2024年にはVGSUの「グローバル版」を策定した 。このグローバル版では，外国人教員や留学生の増員，英語による教育プログラムの拡充のほか，海外大学・研究機関との連携強化による共同研究や教育交流の促進，また，地域のグローバル化支援の推進などが掲げられ，これらを実現するための施策の一環として，学内各部局の教員が横断的に関わる「グローバル信州推進本部」という組織が発足している 。
このような大学全体としてのグローバル化，およびその活動を通じた地域貢献の推進において，筆者（関）が所属する経法学部でも，海外の大学や企業，団体等との教育・研究交流に注力して取り組んでいる。特に台湾との間では，2022年に国立台北大学法律学院と学術交流協定を締結し，これまでに，教育面では，日台の法制度に関するオンライン国際共修授業等，研究面では，高齢者の権利・財産保護に関する国際共同研究，再生可能エネルギーに関する法的規制の比較法セミナーなど，各種プロジェクトを実施している。その他，台湾各地の保護司団体を統括する栄誉観護人協進会連合会との間でも交流協定を締結し，2023年には日本と台湾における保護司の減少・高齢化への対応をテーマとする国際シンポジウムを開催している 。
今後，経法学部では，これまでの国際交流活動の成果と地域社会との接続が課題となるが，奈川におけるアグリツーリズム・プロジェクトへの参加・協力は，そのための取り組みの一つとして位置づけられる。このような取り組みに当たっては，すでに連携関係にある協定締結校のみならず，信州大学が加盟する「日台大学地方連携及び社会実践連盟 (TJ Alliance)」の台湾側参加大学との連携をぜひ図りたいと考えている。
現在，プロジェクトでは，関と大庭が中心となり，台湾の上記大学等の学生に，実際に奈川を訪れ，信州大学の大学生・留学生と合同で農泊を体験してもらい，食や自然などの地域の魅力を味わうと共に，そのくらしや景観を維持するための課題についての理解を深めてもらうための国際共修プログラムのデザインおよび実施に向けた検討を進めている。プログラムの実施においては、国際共修に関する知識・実践経験が豊富な信州大学グローバル化推進センターの教員によるバックアップを受ける予定であり，参加学生には，特定の地域の理解を得るだけではなく，他国の学生との地域における共修を通じ，国際社会で通用する能力やグローバルな視点を獲得することが期待される。プロジェクトに関わる奈川の人びとにとっては，地域との交流を通じてグローバル人材として成長した国内・海外の若い世代が，奈川に継続的に関心を寄せる地域のファン，サポーターとなり，関係人口として，地域の活性化に貢献する存在となることが大いに期待されるところである。
さらに，奈川における日本と台湾の大学生による国際共修実践と，彼らが地域にもたらす変化は，これを目の当たりにする両国の大学の教員に対し，地域と大学の国際的な連携による過疎対策の希少な事例を提供するものである。本事例の考察や効果検証を通じ，日台双方における重要な課題である地方創生に向けた関係人口の創出・拡大に関する研究が進展し，国際学術交流が促進されることも期待できる。今後，当プロジェクトでは，各種関係人口創出事業の手法やその社会的影響に関心を有する台湾の大学の研究者との連携を積極的に図りたいと考えている。過疎化が進む地域のアグリツーリズムを出発点として，継続的な国際交流を実現し，当プロジェクトをもって，地域の活性化のみならず，人材育成や研究者交流の促進など，さまざまな貢献を果たすものとしたい。